訪問看護ステーションひのき 全体研修Vol.18

 



2023年2月21日にひのき全体研修第18回目が開催されました!
今回の研修内容は、
「 新人看護師が押さえておきたい訪問看護開始までの流れ 」です。
新人職員が入職し、1ヶ月経過した頃だと思います。
皆さんの職場の教育状況はいかがでしょうか。
今回の研修では訪問看護の役割や訪問看護開始の流れ、必要な書類について
知識を深めることができました。
この内容を紹介致しますね。


訪問看護の役割を理解する

①法令の理解

②訪問看護の特性理解

まずは、訪問看護に関する法令と訪問看護の特性とニーズについて紹介します。



法令の理解

●法令に基づく訪問看護の定義

(1)介護保険法
要介護者、要支援者に対して、医師からの指示のもと、居宅において看護師等が療養上の世話又は必要な診療の補助を行う。 屋外歩行のリハビリをする場合、居宅外のサービスとなるため、ケアプランへの記載と医師からの指示が必要です。
※原則居宅内で行うサービスである。

(2)健康保険法
①介護保険を持っていない方
②別表7(厚生労働大臣が定める疾患)に該当する方、
③特別訪問看護指示書が発行された方、
④精神科訪問看護指示書を出された方、
に対して、医師からの指示のもと居宅において看護師等が療養上の世話又は必要な診療の補助を行う。

訪問看護では、介護保険の取得有無、指示書に記載される診断名で適応される保険が変わることがあります。
各種指示書に関しては前回の記事で紹介しているのでご参照ください。



訪問看護の役割

○訪問看護の特性

(1)あらゆる利用者にトータルケアを提供する
(2)利用者のみならず家族も対象となる
(3)多職種連携/チームケアである
(4)生活の場での看護提供/その人らしい生き方や価値観、主体性の尊重
(5)訪問看護の対象者は法制度で規定されている
(6)訪問看護師は単独訪問である事が主である



訪問看護の役割

○訪問看護のニーズ

(1)高齢者の増加
(2)家族構成の変化による介護力低下
(3)自宅での最期を迎えたいニーズの増加(実際の在宅看取りは2割くらい)
(4)早期退院(在院日数の短縮)
(5)自分らしさやQOLを大事にしたいと願うニーズの増加
(6)2040年には毎日どこの訪問看護も1人ずつお看取りをしていく時代に
(7)訪問看護の役割が年々重要に

病気を治すのではなく、
傷害・病気とどう向き合っていくか付き合っていくかを支えていく
生きるをどう看護するかが求められるようになってきました



訪問看護利用までの流れ



訪問看護利用までの流れを簡単に表した図になります。
介護保険で介入する場合は
・ケアマネージャーが作成するサービス提供表
・訪問看護開始前にサービス担当者会議の開催が必要になります。



訪問看護利用までの流れ



この章では、訪問看護利用相談から契約まで。
それぞれのフェーズで気をつけること、重要なことを紹介しますね。



(1)新規利用相談と依頼
新規利用相談・依頼は、病院、クリニック、ケアマネージャー等から新規導入の相談や依頼を受けることになります。
ご依頼を受けた際、訪問看護依頼受付票を準備し、依頼者からお話を伺い、
・訪問エリア(住所)・訪問目的・援助内容・訪問頻度等の確認
・希望する曜日や時間等を確認
・訪問看護導入について利用者・家族が同意しているか
・訪問看護導入について主治医から許可をもらっているか確認をしておきましょう。

≪留意事項≫
・介護保険・医療保険のどちらに決まるかによって料金が変わるため事前の確認が必要です。
( 病名や病状、年齢によって利用する保険が介護保険か医療保険に決まるため )
がんの場合は末期か非末期か、厚生労働大臣が定める疾病等の利用者に該当するかどうか。
・本人や家族にどのような病状説明や訪問看護に対する受け止め方やどう理解されているか。
・介護保険利用対象者は介護度と負担割合について。

利用相談を受けた段階で、利用希望者さんの状態を丁寧に確認することで
円滑なサービス提供およびトラブル回避にも繋がります。



(2)受け入れの調整
・訪問看護ステーションの受け入れは、基本的には拒否することが出来ません。
・しかし、曜日や時間帯の希望により双方の日程が合わない場合や
人的要因により(男性限定等)は、この限りではありません。



(3)訪問看護指示書の依頼
・訪問看護指示書の用紙を、返信用封筒と共に送付してよいか、指示開始日はいつにするか確認します。
・依頼してから訪問看護指示書が手元に届くまでに時間がかかるため
先に契約だけでも進めておいた方が良いか、届いてから契約の方が良いか事業所で検討します。
・事業所だけでの判断で難しい場合、利用者・ご家族、ケアマネージャーと相談しておきましょう。

≪留意事項≫
・末期状態や急を要する状況であれば、先にFAXで送って頂けないか医師側に相談しましょう。
・訪問診療医が関わり、訪問看護指示書を退院日から発行できる場合でも
退院日の訪問が必要な利用者には病院から訪問看護指示書を用意してもらいます。
・また、退院日に契約と初回訪問をする場合には、
医療機関から利用者へ訪問看護指示書と退院サマリーを持たせていただく様に事前に依頼をします。



(4)指示書が届いてからの動き(CMへ連絡、利用者への連絡等)
▷契約・初回訪問の調整
依頼を頂いてから利用者・CMと相談の上、契約・初回訪問の日程を決めます。
▷利用者への連絡事項
・電話による初回の挨拶/日程調整
・訪問看護指示書の受取進捗状況(指示書がないと開始できないため)
・駐輪/駐車場の確認
・印鑑の準備/保険証類の準備
・契約/初回訪問に要するお時間の確認。



▷入院中の場合は、退院前カンファレンスへ参加します。
退院前カンファレンスは病院担当医師や看護師と在宅サービス担当者が一堂に会し、
自宅での療養環境を整備し在宅療養のイメージを作り、不安を軽減するための場です。
参加者は退院支援担当者、病棟看護師、病院主治医、ケアマネージャー、福祉用具担当、ヘルパー
訪問看護師、訪問診療担当者などの方々がいます。
退院後のイメージが出来るように訪問看護として自宅に帰ってどのようなことができるのか
必要に応じて説明をしましょう。



(5)契約
重要事項説明書、契約書、個人情報使用同意書の全ての内容を読み上げることが基本ですが、
利用者は高齢者が多く、他のサービス導入時も同様に契約をしなければなりません。
さらに退院後の疲労等の条件が加わると、尚更全てを読み上げることが苦痛になってしまうケースもあり
ます。その点を配慮し、了承頂きながら説明していきましょう。



訪問看護利用にあたっての必要な書類・確認事項

この章では契約前後に必要な書類や物品を紹介します。
書類や物品を理解することで、契約の段階で利用者さんと良い関係を構築しましょう。



▷契約時に必要な書類
①重要事項説明書(イメージは会社の説明書)
「契約前」に行われるものが重要事項の説明であり、契約を締結するか否かを判断する為のものです。
又、契約をめぐる紛争の殆どは「そんなことは聞いてない」という事から発生します。
この「聞いてない」の殆どが重要事項の説明に関係する事であり、本当に「聞いてない」という場合もあれば「聞いたけど忘れた」、「聞いたかもしれないけど良く理解できなかった」など理由は様々です。
このような「聞いてなかった」という事を原因とする紛争を防止する為に「重要事項説明書」を説明し、且つ「確かに重要事項の説明を聞いた」という意味で利用者は重要事項説明書に記名押印をします。

②訪問看護サービス契約書(訪問看護に関する説明書)
訪問看護の内容だけでなく、キャンセル時や天災等不可抗力時の訪問
どういった場合が解約にあたるのかなど。
日々の訪問看護に関わる内容が多く記載されています。

③個人情報使用同意書
個人情報保護法の以下の定めにより個人情報の使用目的を記した文書です。
※個人情報保護法…個人の権利と利益を保護するために
個人情報を取扱う事業者に対して個人情報の取り扱い方法【利用目的を明確にすること】を定めた法律。



訪問に関わるスタッフは上記3点はしっかり確認しておきましょう!



④訪問看護計画書
契約と同時に初回訪問を算定する場合に利用者に渡す必要があります。
特に介護保険利用者で初回加算を算定する場合は必須です。
予め準備した標準計画書に利用者から得た情報や希望を考慮して適宜プランを追加します。

⑤料金表(重要事項説明書内):
利用者の該当する保険の料金表を用いて説明します。
事前に保険証を確認し負担割合を確認し該当する料金にはしるしを付けてわかりやすく説明します。
また1ヶ月分の概算を利用者・家族に伝えることでイメージがつきやすくなります。

⑥パンフレット
事業所の特徴や、サービス内容について記載します。
スタッフの写真などを加えると、
利用者に「この人達が来てくれる」と親近感を覚えてもらいやすくなります。



▷利用者の状況によって必要となる書類
①退院時共同指導説明書
退院前カンファレンスに参加した際に話し合った内容、指導した内容を記した文書で退院時共同指導加算を
算定する上で必須になります。

②預金口座振替依頼書・自動払込利用申込書
利用者によっては、銀行口座による引き落としや振り込みでの支払いではなく、
集金を希望する場合があります。

③24時間対応電話連絡先や緊急時連絡票
24時間対応体制加算、または緊急時訪問看護加算を算定することに同意された利用者は
この用紙を渡します。

④その他
捺印マット、説明者印鑑、朱肉、カーボン紙等



▷契約後の処理と手順
①カルテ内に書類を整理する
・カルテの綴じ方に習って、契約時に頂いた書類を整理します。
・メモした保険証類の情報をカルテに入力します。
・署名捺印を頂いた訪問看護計画書をカルテに綴じます。
・褥瘡対策計画書を記載します。

②電子カルテの入力
・基本情報を入力し、実績・加算を入力します。
・訪問看護記録の入力をします。
・訪問看護指示書を入力します
(指示書が届いた時点に電子カルテに基本情報を入れておく方がスムーズです)

③初回訪問後
以下のことを医師、ケアマネージャーに報告
・初回訪問をしたこと
・初回訪問で得られた情報



まとめ

いかがでしたか。 今回の記事は、訪問看護で初めて勤務する職員の方はしっかりと理解しておきましょう。 制度・書類・物品の理解は、利用者さんと良い関係性を構築するために欠かせません。 新規の利用者さんを担当する際、是非参考にしてください。