訪問看護ステーションひのき 全体研修Vol.9

 



〜介護・医療従事者のための在宅におけるハラスメント〜

2022年5月10日にひのき全体研修第9回目が開催されました!
今回の研修内容は、
「介護・医療従事者のための在宅におけるハラスメント」です。

近年、介護現場では利用者や家族等による介護職員への
身体的暴力や精神的暴力、セクシュアルハラスメントなどが
少なからず発生していることが様々な調査で明らかとなっています。
ハラスメントに関する定義と実状について理解し、
いざという時の対策方法を知っておきましょう。


ハラスメント定義と実際について知っておこう

ハラスメントとは?

受取側が嫌だと感じる事言動や行動のことを言います。

1)身体的暴力 身体的な力を使って危害を及ぼす行為。
例:コップをなげつける/蹴られる/唾を吐く

2)精神的暴力
個人の尊厳や人格を言葉や態度によって傷つけたり、おとしめたりする行為。
例:大声を発する/怒鳴る/特定の職員にいやがらせをする/
  「この程度できて当然」と理不尽なサービスを要求する

3)セクシュアルハラスメント
意に添わない性的誘いかけ、好意的態度の要求等、性的ないやがらせ行為。
例:必要もなく手や腕を触る/抱きしめる/入浴介助中、あからさまに性的な話をする


ハラスメントに該当しない例

●認知症等の病気又は障害の症状として現われた言動(BPSD等)。
●利用料金の滞納
(滞納自体は債務不履行の問題ですが、不払いの際の言動がハラスメントに該当することはあります。)
●苦情の申立て

病気又は障害に起因する暴言・暴力であっても、
職員の安全に配慮する必要があることには変わりがありません。
事前の情報収集等(医師の評価等)を行い、施設・事業所として、
ケアマネジャーや医師、行政等と連携する等による適切なケアを
提供することが大切です。
また、暴言・暴力を受けた場合には一人で問題を抱え込まずに、
すぐに上長等に報告・相談をし、組織的な対応を依頼してください。



在宅で行うべき対策とは

サービス提供をする前にチェックしておくべきこと

ハラスメントから身を守るために、
みなさんに日常的に意識していただきたいことを
チェック項目として整理しました。
日頃の行動を確認しましながら、具体的行動方法を身に着けて行きましょう!

チェック項目①:介護現場で何がハラスメントのきっかけや原因になるか知っていますか?

■環境面できっかけや原因になりうる事柄■

・サービス提供時に身近にある物品
(利用者宅にある包丁などの刃物類、アダルトビデオ等)
・利用者や家族等の状態(攻撃的な言動、怒りによる興奮状態 等)によっては、
身近にある物品が思わぬ使われ方をする恐れがあります。

・ケアを行う場所の状況
(出口が遠い、閉めきりや近隣に住宅等がないといった助けを求めても声が届きにくい、鍵がかかる等)

・訪問先にペットがいる
放し飼いによるサービスへの影響、思わぬ噛みつき等の可能性が考えられます。

■利用者の状況できっかけや原因になりうる事柄■

・生活歴に起因する例
違法行為や暴力行為がある(過去にあった)、攻撃的な言動がある
家族や人間関係でトラブルを抱えている(過去に抱えていた)
訪問時に酒に酔っていることがある 等。

・病気または障害に対する医療や介護等の適切な支援を受けていないことに起因する例
アルコール依存症、薬の副作用等。

・提供サービスへの理解に起因する例
利用者、ご家族がサービスの提供範囲を理解していない、過度な期待をしている。

■サービス提供側(施設・事業所)の状況できっかけや原因になりうる事柄■

・施設・事業所としてサービスの提供範囲の徹底や統一をしきれていない。

・施設・事業所として、利用者や家族等と、サービスの提供範囲等に関する
すり合わせが不足している、サービスへの期待に応えられていない。

・サービスを提供する上での規則やマナーに関する指導・教育ができていない。

・個人情報の取り扱いに関する教育ができていない。

・利用者や家族等からの意見・要望・苦情等への対応(姿勢ややりとり)が不適切だった。

・コミュニケーション不足等により利用者が言葉にできない気持ちやニーズをくみ取れていない。

チェック項目②:介護保険制度に基づくサービスの提供範囲や契約書・重要事項説明書の内容(サービスの提供範囲の他、ハラスメントに関わる事項を含む)を知っていますか?

チェック項目③:サービス提供に係る施設・事業所の各種規程やマニュアルの内容を知っていますか?

チェック項目➃:適切なケアを行うために必要な、利用者の諸情報を知っていますか?

チェック項目➄:適切なケアを行うために必要な、利用者の家族等に係る情報の収集に努めていますか?


サービス提供をする時にチェックしておくべきこと

チェック項目①:利用者や家族等に対して、相手を尊重しつつケアを行うこと、
今までの生活をできるだけ続けられるように自立支援を意識することなど、
基本的な対応方法を常に心がけていますか?

チェック項目②:サービスの提供にあたり、服装や身だしなみは適したものになっていますか?

チェック項目③:サービスの提供とは関係ない個人情報の提供を、利用者や家族等から求められても断っていますか?

チェック項目④:介護保険制度に基づくサービスの提供範囲や契約書・重要事項説明書の内容(サービスの提供範囲の他、ハラスメントに関わる事項を含む)について、利用者や家族等から説明を求められた時、分かりやすく説明していますか?

・説明を求められた理由を考えた上で、
契約書・重要事項説明書に基づき、分かりやすく説明してください。

・理解できていないことがある、または、説明に不安がある場合は、
無理に一人で対応せずにすぐに上長に報告・相談してください。

チェック項目⑤:利用者や家族等から、介護保険制度や契約の範囲を超えるサービスを求められた際、提供できない理由を分かりやすく説明していますか?

・「なぜ求められたのか」を考えた上で、
契約書・重要事項説明書に基づき、理由を分かりやすく説明し、
お断りしてください。

・一度でも応じてしまうと、トラブルにつながり、
サービスを継続できなくなる可能性があります。
「ついでだから…」、「今回だけだから…」と応じずに、
分かりやすく丁寧に理由を説明の上、きちんとお断りしてください。

チェック項目⑥:利用者や家族等から要望・不満・苦情等を受けた場合、内容に応じて適切に対
応していますか?

・利用者や家族等からの要望・不満・苦情は、
提供するサービスの改善を図る上で必要かつ重要な情報です。

・要望・不満・苦情等を受けたら、速やかに上長に報告しましょう。

チェック項目⑦:ハラスメントを受けたと少しでも感じた場合、すぐに上長または施設・事業所に設置されている相談窓口に相談していますか?

・ハラスメントかどうか悩むことも含めて、どんなに小さなことでも構いません。
一人で問題を抱え込んだり判断したりせず、
必ず上長または施設・事業所の相談窓口まで相談してください。

・認知症等の周辺症状に係る悩みも含めて相談してください。
また、認知症等に係る問題が発生した時は、すぐに上長に報告し、
組織的な対応を依頼してください。
相談が早ければ早いほど、問題解決に向けてよりよい対応を行うことができます。

チェック項目⑧:ハラスメントに関する事例を積極的に職場で共有し、意見交換を行っていますか?

・よりよい職場環境づくりのためには、「ハラスメントは我慢するものではないこと」、
ハラスメントを受けた、又は、受けたと感じたらすぐに相談できる
職場の雰囲気づくりが重要であること、これらをみんなで確認していくことが大切です。

・日頃からハラスメントに関する意見交換や情報共有を積極的に行いましょう。
具体的な内容や対応ノウハウを共有し、必要な取組の検討や
類似した事例が起こった際の対応に活かしましょう。

信頼関係を大切に…

ハラスメントが起きる理由は、ご利用者様、ご家族、、私たちスタッフ側、
全てに起因する可能性があるということを覚えておきましょう。

ハラスメントは誰にとっても気持ちの良いものではありません。
ハラスメントが起きにくい環境づくり、関係性づくりをしていきましょう。