訪問看護ステーションひのき 全体研修Vol.7

〜医療現場で知っておくべき高齢者虐待と権利擁護〜
2022年3月15日にひのき全体研修第7回目が開催されました!
今回の研修内容は、
「医療現場で知っておくべき高齢者虐待と権利擁護の知識と考え方」です。
「虐待」とはニュースで見るようなものだけではなく
日々の介護の中で、何気なく行なっていることが虐待になり得ることもあります。
正しいケアを行うためにも、虐待について正しい知識を持っておくことが大切です。
虐待とは何か?
また、高齢者を虐待から守るためにどうしたら良いのか?
大事なポイントをまとめてみました!
「虐待」を知ること
虐待とは?
「虐待」と聞くと、報道や言葉自体のイメージから
「わざと高齢者に暴行を加える行為」であって過失は含まれない。
と理解してしまいがちですが、ここに大きな誤解があるのです。
報道などで取り上げられている「虐待」はわざと高齢者に暴行を加える
刑法上の故意犯に該当するものがほとんどです。
高齢者虐待防止法が定める虐待の定義は刑法上の故意犯とは別物である、
ということを理解しておかなければなりません。
その行為が虐待にあたるかどうかは、故意にやったかどうかではなく
結果としてそういう状態であるかどうかで判断されます。
私たちの仕事の中には、いつでも虐待と判断されてしまう機会が
たくさんあるということを念頭においておきましょう。
訪問看護の現場であればスタッフやご家族様が、
虐待しているつもりがなくてもそれに該当してしまうというケースが多くあります。
具体的に何が虐待にあたる?

身体的虐待・・・例)ベッド上での生活を強要、車椅子を強く推し放つ など
心理的虐待・・・例)本人がいる前でトイレ事情を話す、言っていることを無視する など
経済的虐待・・・例)不当な料金を請求する、好きな時にお金をおろせない など
性的虐待・・・例)人から見えるところでオムツ交換 など
ネグレクト・・・例)トイレに行けるのにオムツ対応、忙しいから後でを頻発 など
虐待の3つのレベル
虐待の状況の深刻さから、
【緊急事態】【要介入】【見守り、支援】の
3つのレベルに分けて考えます。

高齢者虐待防止法について
そうは言ってもどうしようもない状況や判断に困ってしまう状況に
直面することも多いかと思います。
そんな時のために、高齢者や養護者を支援するための法律
「高齢者虐待防止法」というものがあります。
高齢者を守るため、自分自身を守るために理解を深めておきましょう。

高齢者虐待防止法における虐待の定義は、
高齢者が他者からの不適切な扱いにより、
権利利益を侵害される状態や生命、健康、生活が
損なわれるような状態に置かれること、です。
高齢者虐待防止法の概要
①高齢者の保護のみならず、
養護者への支援も目的としている。
②「養護者による虐待」と「養介護施設従事者等による虐待」への
対応を規定している。
③虐待の5つの種類を規定している。
④養護者による虐待は市町村・地域包括支援センターが対応する。
⑤養介護施設従事者等による虐待は、都道府県・市町村が対応する。
⑥国や自治体に連携強化、体制整備、専門的人材の確保、
広報啓発の責務を規定している。
⑦介護・福祉・保険医療などの関係者には早期発見の努力、
協力が求められている。
⑧市町村の立ち入り調査権、警察への援助要請、
老人福祉法上の措置の実施、面会制限、成年後見の
申立などの行政権限があることが規定されている。
⑨財産被害の防止も施策の一つとしている。
⑩成年後見制度の利用頻度が明記された。
ここで言う「養介護施設・事業」と「従事者等」についての
範囲も把握しておきましょう。

支援者として目指すものを再確認する
私たち支援者の使命はご利用者様の
「尊厳が保持される生活」「自立生活」を支援すること。
つまりご利用者様の権利擁護です。
支援者として、
①本人の権利とは何か
②現状ではそれがどう侵害される恐れがあるのか
③その権利を護るためには実際にどう行動をすればいいのか
について考えることが重要です。
意思は、たとえ認知症等により判断能力が
不十分になったとしてもなくなるわけではありません。
上手く意思を出せなかったり、伝えられなかったりすることはあっても
誰もが自らの意思に基づき、自分で選んで決めて行く事を
繰り返しながら生きています。
自ら上手くそれらが出来なくなってしまった時に、
本人の意思を尊重しながら支援していく事が大切です。
常に本人を中心とした意思決定支援を行っていきましょう。
正しいケアを届けるために
自分が虐待またはそれに近いケアをしてしまわないように
虐待についての知識をしっかりと身に着け、
高齢者虐待防止法について理解を深め、
日々のケアを見つめ直し、より良いケアを目指しましょう。
支援者として何を目指すべきかを常に再確認することが大切です。